鈍い痛みで目を覚ました。
「いてて……。……ん? ここは……」
「あ、やっと起きましたかー!? 全く、着いていきなり倒れるなんてどういうことなんですかっ?」
「い、いやそんなことを言われても……」
俺にはこんなところにいる理由が思いつかないし、一体何がどうなっているんだか……。
冷静になろうと周りを見渡すと、いかにも中世ヨーロッパを思わせるような調度類がいかにも中世ヨーロッパを彷彿とさせる家屋に整然と並んでいる。まるで中世ヨーロッパに来ているみたいだと俺は思った。
ははは、まさかそんなわけないよな。
家具を見ていて気になったのは部屋の中におけるベッドの比重の高さ。これに似た建物を俺は何処かで見たことがある気がする。
そう、それはまるでやど――、いや、ありえない。この現代日本において「やどや」なんて建物は存在しないはずだ。
「……それで、ここは……?」
「あ、宿屋ですよ! 道端で倒れていたのでここに運び込んだんです。そのあとも4日間寝込んでましたけど――」
「4日!? 4日って……。いや、ここはどこだ!? 今すぐ帰らないと……!」
「こ、困ります! 貴方にはこれから兄様のところに行って世界を救ってもらわなきゃならないんですからっ!!」
……。
……?
「世界を救う!?」
「あ、いえ。正確にはこの国でした」
「結局変わらなくないか!?」
頭が痛くなってきた。姉貴の好きそうな設定だ。ドッキリカメラはどこだ?
「あの、どうかしたんですか? 特に異存がないなら来てほしいんですが」
くそ、もう仕掛けてきやがった。だが、こちらに打つ手がないのも事実……。
仕方がない、ここは引っかかっておいてやるか。後で姉貴を殴ればいいだけの話だ。
「ああ、わかった。とりあえず外に出よう」
だが俺は、外に出た時に見る光景を想像できなかった。
だってそうだろ? 普通自分が異世界に来たなんて信じない。
だから俺は、もう一度叫んで気絶するということをしてやっとその事実を受け入れるしかないと気付くのだった。
何故か、頭が痛い気がするのは気のせいだろう。
「で、国家の危機って一体何なんだ? 魔王でも攻めてくるのか?」
「え? 魔王なんてそんな力もってませんよ? 領地もここから遠いです」
「じゃあモンスターの大発生か? 伝染病か? 経済の危機なのか?」
「だからモンスター自体そんなに出ませんし、猛威をふるうような伝染病も経済危機も兆候はありませんって! 何回言ったらわかるんですかっ!?」
「いや、すまん……。じゃあ一体何から救えと……?」
「わからないからお城に帰ろうとしているんじゃないですかっ!」
俺は、調べて来いよ、と思わなくもなかったがこいつにもこいつの都合というものがあるのだろう。
しかし、困った。
特に国を滅ぼすようなものが存在しないうえ、国を救わなきゃ帰れないってストーリーだろ、これ。
どうしたもんかなぁ……。はぁ。
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