リレー小説1(仮題)
物語にはお約束というものがある。
ラブコメで出会い角でぶつかってしまったり、バトル物で倒した敵以上の敵が現れたりするようなことだ。
かく言うこの書き出しも既にお約束としての立ち位置を確立しているかもしれない。
当然、普通に生活していればそんなお約束など見ることもないし、遭遇するなんてさらにまれなことになるだろう。
だから俺はそんな存在を信じていなかった。
今日この日、異世界に吹っ飛ばされるなんて経験をするまでは。
「――」
絶句するしかない俺の眼の前には活気づく市場があった。
みずみずしい野菜が売られ、白い肌の人々が歩く通りはどうやら商店街のようだ。
行きかう人々は互いに会話をしているが、俺には一体何語を話しているかはわからない(少なくとも4年間の英語教育を信じるならば英語ではない)。
そんな金髪たちの中にぽつんと佇む黒髪=俺。
道路の真ん中でぽかんとしている制服姿=俺。
……。
「だから、ここは、どこなんだー!!」
俺の叫びは虚しく空に吸い込まれていった……。
「あ、やっと見つけましたー!」
本当に、ここは一体どこなんだろう?
まさか本当に異世界なんじゃあるまいし。外国……、だとしたらどこの国だ? ここは。
「ちょっと、ちょっとそこの人ー!?」
ふう、これから忙しくなるな……。飛行機で何時間あれば帰れるかな……。
といかそんなに持ち合わせあったっけ。
「待って下さいって――」
ん? なんだ? やけに周りがうるさいんだが、俺か? さっきから呼ばれてたのは俺か?
俺は周りにせかされるように振り返る。
「言ってるじゃないですかぁ!!」
振り返った瞬間見えたのはとんでもないものだった――。
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